1級建築施工管理技士 実地試験-施工経験記述(施工の合理化)

令和2年(実施されるのは令和3年)の1級建築施工管理技士の実地試験日まで近づいてきました。

各問題の対策への勉強と施工経験記述のまとめで一番忙しい時期になっていますね。

本年度の実地試験の施工経験記述は例年のローテーションを考慮すると『施工の合理化』が出題される可能性が高いです。この課題を含めて、きっちり施工経験記述は的確な対策を取って確実に高得点を取りたい問題です。

※2023年度用に『施工の合理化』は新たに書き下ろしました。

改めて整理をしておきたいと思います。

過去の傾向

実地試験の出題の傾向と対策については下記の記事にまとめています。

そしてここ7年間に施工経験記述で出題されているテーマは下記の通り。

  • 令和元年 品質管理
  • 平成30年 建設副産物
  • 平成29年 施工の合理化
  • 平成28年 品質管理
  • 平成27年 建設副産物
  • 平成26年 品質管理
  • 平成25年 施工の合理化

平成28年は『施工の合理化』と思いきや、品質管理でした。

昨年は品質管理が出題されているので、今年は『施工の合理化』もしくは『建設副産物』の出題される可能性が高そうです。

しかし基本的には上記3つの課題については確実に記述が出来る準備をしておく必要はあると思いますが、特に『施工の合理化』・『建設副産物』は重点的に取り組みたい所です。

今回は『施工の合理化』についてまとめたいと思います。

出題内容 1(平成29年度)

 今後、建設業において、高齢化等により技能労働者が大量に離職し、労働力人口が総じて減少するために、建設現場の生産性の向上がなお一層求められている。 あなたが経験した建築工事のうち、生産性向上をめざして、品質を確保したうえで施工の合理化を行った工事を 1 つ選び、工事概要を具体的に記入したうえで、次の1.から2.の問いに答えなさい。
なお、建築工事とは、建築基準法に定める建築物に係る工事とし、建築設備工事を除くものと する。

そして上記に続く実際の問いの内容は、(工事概要の記載部分は省略する)

 工事概要であげた工事において、あなたが計画した施工の合理化の事例を 2 つあげ、それぞれの事例について、次の①から④を具体的に記述しなさい。 ただし、2つの事例の②から④の内容は、それぞれ異なる内容の記述とする。
① 工種又は部位等
② 施工の合理化が必要となった原因と実施した内容
③ 実施する際に確保しようとした品質と留意事項
④ 実施したことにより施工の合理化ができたと考えられる理由

記述が必要な内容は、

  1. 工事名もしくは部位名
  2. 施工の合理化が必要になった要因実施した内容
  3. 施工の合理化をするにあたって品質も確保し、なおかつ留意すべき事項について
  4. 施工の合理化につながったと思われる理由

2つの工種を取り上げ、4つの問題について丁寧に記述する必要があります。

施工の合理化とは

施工管理者は基本的には設計図書に基づき品質・工程・安全・コストを管理しながら施工すれば良いのですが、多くの新築工事や改修工事を実施していると多くの問題や課題に直面します。

  • 工期が決まっている。
  • 立地的、あるいは近隣条件などさまざまな制約がある。
  • 天候不順や台風など、気候や自然災害に影響を受ける。
  • 人手不足で人員確保がままならない。(特に熟練工が少ない)
  • コロナ蔓延による緊急事態宣言でしばらくの期間、工事が止まった(今年的な解答として)

工事を進める中で多くの問題や課題は生まれてきます。

色んな条件や突発的な事が発生すると、

・悪天候が続き工期に遅れが生じる。
・予定の工期がずれて人の確保が難しくなる。
・各工事工程に影響を受ける。

上記のように、一つ問題が発生すると、悪循環な流れになる場合も多いです。
そういった際に工期を厳守するためや作業の省力化・人の省人化を図るために検討するのが施工の合理化です。

施工の合理化を行うことによって、工期短縮・省力化・省人化・生産性向上に繋がることが前提です。

  1. 監理者と協議の上、工法を変更して工期を短縮させる。
  2. 現場加工ではなく、工場で完成させて搬入をすることにより、現場では組立作業のみとして省力化を図る。
  3. 現場実測の上、材料を全てプレカットで納品し、端材などの廃棄物の減量を行うことにより省力化・工期短縮を図る。
  4. 外壁タイルなどプレキャスト化を図って現場での省力化を図る。
  5. 新技術の導入などにより工事の機械化を図る。

などが考えられます。

但し上記のような合理化を図ることにより、品質が結果的に落ちてしまえば、設計監理者も施主も納得させることは出来ないので、多くの出題パターンとしては、施工の合理化を実施しても品質が確保できているかを明確に説明が出来る事もポイントになってきます。

施工の合理化の記述例

解答例①

①工種又は部位等・・・左官工事

②施工の合理化が必要となった原因と実施した内容・・・

床の左官工事が繁忙期と重なり、熟練工の手配が難しく、また床の平坦性の確保がその後の床仕上げ工事の品質を左右するため、モルタルの金ゴテ仕上げから熟練工を必要としないセルフレベリング材で施工を行った。

③実施する際に確保しようとした品質と留意事項・・・

セルフレベリング仕上げは左官仕上げと異なり、職人の熟練度により品質にバラツキが出ることがないので、強い風や直射日光が入らないよう、また適切な養生期間を確保するよう留意して、床の平坦性を確保した。

④実施したことにより施工の合理化ができたと考えられる理由・・・

手配の難しかった熟練工を必要とせず、施工もレベリング材は自然と平滑となり、金ゴテ仕上げも不要で左官工事より1日あたりの施工量も多く出来るので、工期短縮と職人の省人化につながるため。

 

解答例②

①工種又は部位等・・・鋼製建具工事

②施工の合理化が必要となった原因と実施した内容・・・

全般的に工程が遅延していたので、住居供用部に数多く設置する鋼製建具は当初現場でのOP(油性)塗装の予定だったが、工事監理者の承認を得て、工場で焼付塗装仕上げとして現場では組立施工のみとした。

③実施する際に確保しようとした品質と留意事項・・・

現場でのOP塗装に比べ、工場での焼付塗装は塗装ムラもなく仕上がりは高級感があり安定した品質が確保できる。但し、建具設置後は養生パネルを建具に設置して、仕上げ工事や資材搬入時に本体に傷がつかないように留意した。

④実施したことにより施工の合理化ができたと考えられる理由・・・

現場でのOP塗装の場合、塗装する手間と塗装後の乾燥期間が必要となってくるが、工場で焼付塗装した建具は現場での仕上げ作業が全く不要となり、塗装工事の省力化と工期短縮につながるため。

きっちり論理構成を組み立てる

施工管理者は基本的には設計図書に基づき工事を進めます。

しかし現代の工事は先ほども記載した通り、工事進行中に諸問題や課題が発生します。(何も問題がなければ設計図書通りに施工を行う)

・コロナウィルス蔓延により一時的に工事が止まったが、その後工程の促進をする必要があった。
・昨年のような大型台風で、緊急対応が必要となった。
・現場作業がとても狭小で、作業スペースが限定されて工事が思うように進捗しない。

それに対して、4つの解答記述は、

①どの工種・部位で、

②工事を進める上で解決すべき課題(工期の短縮など)があり(※これが施工の合理化が必要になった要因)、それに対してどのように施工の合理化を実施したかというロジックをまず組み立てます。

(例)
天候不順が続き工期が遅延していたので工期短縮を図るために、○○工法の計画を監理者の承諾を得て〇〇工法に変更した。
※年度末工事と重なり熟練工の確保が難しいことが想定されたので、省力化を図るために、・・・・

③監理者に承認を得ているという事は、変更しても品質が確保出来ている前提です。『施工の合理化』を行った上で、どのように品質を確保したか、そしてどのような事に留意したかを示さねばなりません。

確保した品質・留意した事項、この2点が必ず採点者にわかるように記述しましょう。

(例)
※工事に際しては〇〇に留意しながら、〇〇を実施する事により品質を確保した

④その実施した内容というのが、どのような『施工の合理化』につながったのか?その理由をまとめます。

(例)
・A工法をB工法にする事により、ある工程が削減され、工期短縮につながるため
・現場加工をなくし、工場で完成品を納入して現場では組立作業のみとなり、作業の省力化につながるため

④はきっちり、この施工は『施工の合理化』である理由を明記できれば良しです。

このような手順で論理を組み立てていきましょう。

・施工の合理化が可能な工法(題材)について下記にまとめてみました。

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実際の新築工事や改修工事に際して、多くの施工の合理化を求められるシーンは実際によくあると思います。

ただ実際に施工の合理化がやりやすい工種と難しい工種があるので、この毎年行われるこの技術検定の経験記述の解答も比較的に似た答えが多くなりがだと思います。

前々回の平成25年の施工の合理化の出題は、

 工事概要であげた工事で、あなたが担当した工種において実施した、施工の合理化の事例を2つあげ、次の①〜④について、それぞれ具体的に記述しなさい。
ただし2つの事例の「合理化を行った目的と実施した内容」はそれぞれ異なる内容の記述とする事。また現在一般的に行われている躯体・仕上げ材料のプレカットに関する記述は不可とする。
①工種と部位
②合理化を行った目的と実施した内容
③実施した内容が合理化に結び付く理由
④実施した内容が品質を確保できる理由

この年の出題はプレカットに関する記述は不可というものでした。プレカットの内容のみを用意していた方は痛恨だったかと思います。(私の知人はこれに該当して書けなかったそうです)

また具体的な出題内容も、平成29年の『施工の合理化』の問題とは異なっています。
②合理化を行った目的実施した内容 →これは平成29年と大きくは変わりませんね。
③実施した内容が合理化に結びつく理由
④実施した内容が品質を確保できる理由

③④の2つの問いが理由を解答する問題になっています。

ちなみに平成22年度の4つの問題は、

① 工種、部位等
実施した内容  →施工の合理化実施の目的は聞かれていないが、書いても問題ない
③ 合理化となる理由
④ 品質が確保される理由

上記の通り、平成25年同様に③④では理由を記述する問題となっています。ですので、『施工の合理化』の問いは、今年出題されても同じにならない確率は高いので、記述の丸暗記は避けた方が良いでしょう。

 

まとめ(準備)

施工の合理化を記述するにあたって下記のポイントは最低限押さえておきましょう。

・施工の合理化の目的(必要になった要因)
・そして実際に実施した内容
・確保した品質とその上で留意した事項
(もしくは実施した内容が品質確保につながる理由
・実施した内容が施工の合理化になる理由

また、施工の合理化を実施した内容が、

・建設資材廃棄物の縮減にも効果がある。
安全性の向上にもつながる。

と言ったパターンでも解答できるよう準備出来ればベターかと思います。

自分でまとめた解答案を丸暗記するのではなく、問題に応じて自分の文章を書けるように準備しておけば、多少パターンが変わっても対応出来ます。また施工の合理化はプレカット以外の解答案を2つ程度持っておくと良いでしょう。

実地試験まで残された日数は少なくなりました。勉強の進捗状況を整理する時期ですね。
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